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UCC缶コーヒーの思い出3

じいちゃんの家
俺が熊本の田舎へ帰っていたのは、小学校3年~中学1年の夏休み。
春休みにも何回かは帰っていた。
その頃は平屋で、多分昭和の初めころに建てられたのではないかと思う。
今の2階建ての家は俺が夏休みに帰らなくなった高校生頃に建てられたのかな。
昔の家の話に戻そう。
松ヶ崎の海水浴場から帰ってくる道は変電所の横を通って、土手のけもの道を上がってくるか、
村のメインストリートである東海電極の社宅(100戸くらいの平屋住宅街)外れにある銭湯前の道を
通って来る。
銭湯前から橋を渡ると右側にクリーニング屋さんがあった。
ここは村唯一の電話がある家で、村の皆さんの電話を取り次いでくれた。
おばさんが何度か電話が掛かっていると、呼びに来てくれたことがあった。
この道は舗装されてなく、左側には川が流れていた。
じいちゃんの居間の裏を流れる川がこの川になり、銭湯の前で南からくる川と合流して海に注ぐ。
2mくらいの深さがあったが、普段はあまり水が流れていなかった。
中学1年の夏休みだったか。
この川、家の前の川に蛇がいて、蛇が嫌いな俺はこの蛇に向かって石を投げた。
その時は当たったように見えなかったが、翌日蛇が1匹腹を見せて死んでいた。
未だにそのことが記憶にあるように、
とんでもない悪いことをしてしまったと、反省した。
申し訳ないことをしてしまった。
罪の償いで、畜生の霊で廻向をさせて頂いた。
本当にごめんなさい。
川伝いの道から庭に入る。
南側は畑になっている。
庭に入ってすぐ左が縁側になっている。
縁側の東が仏間で、出入り口がある。その奥に玄関の引き戸。
さらに奥に入っていくと、井戸があり、洗い場として10畳くらいの広いスペースが取られている。
北側は炊事場に面している。
東側は隣の家、下山さんの畑で高さ2mほどの石積みになっている。山間地なので隣の家の敷地は2m高くなっている。
一番奥で洗い場の南に面しているのが2畳ほどのふろ場で、薪を燃やす穴が空いている。
風呂は五右衛門風呂(ごえもんぶろ)で洗い場側は壁も扉もない筒抜けになっている。
浴槽は本物の釜で、煮物をする釜の大型版である。
人間を煮込むことができる。
真ん中に薄い板が浮かんでいて、これを踏んづけて湯に浸かる。
俺は子供だったので、板に上手く乗れず、足元がゆらゆらして板から落ちた。
釜は鉄板で、下から火を焚いているので足が焼けるように熱かった。
あつっ、熱っと言って、板を手で取って体重を掛けて凌いだ。
パチパチと柴が弾ける音が、暗闇の中で炎の明るさだけが頼りの風呂場に響いていた。
風呂に芝(しば)をくべてくれるのは、守さんの嫁の律子さんである。
いつみても働いていた。
いつ寝るのかと思うくらい働いていた。
農家の長男の嫁。ほんとに大変だと思った。
私のようなものがここでご飯が食べられるのだから、
こんな幸せはないと、感謝感謝の毎日であることを話してくれた。
実家が貧乏で、生かされていること、元気で働けることをありがたいと言っていた。

奥の洗い場に行かず玄関を右に曲がれば馬小屋、農機具小屋。
その隣が便所。
その隣が牛小屋。
ウサギもいた。ウサギは山から出てきたのであろうか。
牛は食べ物ではない。
農業作業を手伝う仲間、家族である。
夜は真っ暗な中を便所に行く。
子どもは暗いところが怖い。
便所まで行かずに庭でおしっこをして、しょっちゅう怒られた。

2つ3つの頃は、庭に干してあった小豆と何かをごちゃごちゃに混ぜて怒られた。
食べた茶碗を土間に投げて怒られた。
ばあちゃんが「我がおどりゃー!」と言って怒った。
そのばあちゃんが、大阪に夜行で帰る時にはいつも、
ゆで卵を持たせてくれた。
新聞紙にくるまれたゆで卵。
汽車の中で食べた。

特急なはの車内販売でUCC缶コーヒーを買って飲んだ。
100円だったと思う。
今まで経験したことの無いおいしさ。
甘くてコーヒーの香りがして。
世の中にはこんなおいしいものがあるのかと、感激した。

じいちゃんがご飯の時に言う。
「お前ぎゃん父(と)ちゃんなぞ、こぎゃんして箸(はし)を持つどが」
と握り箸をして見せた。
「てるおも同じように真似(まね)ばして持ちよるが、こりゃあダメばい。良かなかと」
「ぎゃんして持つとばい」
と箸の持ち方を矯正(きょうせい)してくれた。
今、俺の箸の使い方にこの時のじいちゃんの教えが生きている。
じいちゃんが俺の体の中で生きている。
良かったね。
良か!良か!





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Author:mahalo1116
橋口輝雄です。
大きくなっていく真悠にメッセージを送っています。
父がこんなにも真悠を愛していたと、伝わればいいね。
真悠は愛されていたんですよ。
だから大丈夫。
生きていれば苦労の連続だけど、大丈夫。
安心してね。
これは父から娘への遺言です。
だから他の人は読まないでください。
読んでもおもしろくないし。
ごめんなさい。
真悠、いつかメール頂戴ね。
待ってるで~。
メールの送り先:
maha.mahalo1116@gmail.com

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